「本当のこと」を言われても怒っていい

　「本当のことだから言われても仕方ない」「本当のことだから怒っちゃダメだ」こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。私はこれに納得がいきませんでした。
その理由が長らくわからなかったのですが、最近あることに気づきました。

それは「思ったことを口に出すのは、本人の意志によるもの」です。

　例えば、外見を気にしている人がいたとしましょう。残念なことに、世の中美醜の差はあります。その人を見てブサイクだと思うのは自由です。でも、実際に「あなたはブサイクだね」と口に出すのは、伝える意思がある場合だけです。

　人は何を考えても自由です。でも発言には責任を持たなくてはいけません。
　自分の思考を口に出して相手に伝えるのは、何かしらの意図があるからです。

　「ブサイク」と言われたら傷つくことは容易に想像が出来るのに、わざわざ口に出すということは、そこに「貶してやろう」という悪意があるからです。

　多くの人は、人を傷つける言葉が何かを知っているはずです。それを伝えたら相手がどう思うかわかるはずです。わざわざ傷つける言葉を口に出して伝えるのならば、そこには「悪意」や「蔑視」が間違いなくあるのです。

　私のエピソードをお話します。
　ある飲み会で、恋人がいるかという話になりました。そのとき、同期の男子は真正面から私を指差して言いました。
「お前は、一生結婚できないよ」と。

……？(・_・)

　なぜ、たった数ヶ月の付き合いの人にそんなこと言われなきゃいけないのか？冗談だったとしても、それって仲の良い人にしか言わないやつでは？

　腹が立ちましたが、動揺もあってその場では中途半端な怒り方しかできず。不完全燃焼で、後からじわじわムカついてきました。

　このことを、私は飲み会の席で何人にも愚痴ってしまいました。（この辺は言いふらした感じになった私も悪かった）で、それが本人の耳に入り、２年目の飲み会。その同期は言いました。

「怒るってことは自信あるんだろ？じゃあ今年中に結婚してみろよ」と。

……？( ﾟдﾟ）

なぜ私のプライベートを、お前が期限を決めて指図するんだと、めちゃくちゃ腹が立ちました。

　しかし、その一方で自己嫌悪もありました。
　実際に私の容姿は美人とは程遠く、化粧も下手で地味です。性格もガサツですし可愛らしさの欠片もありません。いわゆる女性的な魅力が無いことは自覚しています。

　あれ…？じゃあ彼の言葉は事実で、自分も認めてるのに、なぜ腹が立つんだ？
　自分を卑下して予防線を張っているけれど、本当の私はプライドが高いのか？
　大した努力もしてないくせにプライドだけ高いとは、人としてめちゃくちゃダメなのでは？

　彼に腹を立てると同時に、自分自身への嫌悪感もわきあがり、怒っている自分こそダメなやつだと思ってしまいました。

けれど、考えていくうちに、私は下記のことに気づきました。

・私に魅力がない事実と、彼が口に出して伝えてきたことは、別の問題。
・口に出して伝えてきた彼には、明確な悪意があった。そのことについて、私は怒っていい。

　もちろん自分を省みるのは大事です。ここまで言われるのですから、私に問題があることは確かでしょう。でも、罵倒されたことには怒っていい。この感情は認めていい。
だって、私のダメな部分を指摘するなら、言い方は他にいくらでもあったはずです。

　本人は冗談のつもりでも、私は彼の友達ではありません。他人を傷つける冗談って、その時点で冗談として成立してないと思うんですよ。「冗談だから本気にするなよ」って言葉、さも傷ついたこちら側が悪いように仕立て上げて攻撃を正当化する、すごく卑怯な言葉だと思います。

　テレビの芸人さんは酷いイジりを受けていますが、彼らはそれでお金を受け取っています。（だからといってやりすぎていい理由にはなりませんが）それを真似て、笑いを取ろうとして冗談を言うのでしょうが、なぜ何の対価も得ずに、一方的にディスられなければいけないんでしょうか？

　彼は普段から他人、特に女性に対してやたらと上から目線な人で嫌いでした。「悪意を持って他人を傷つける言葉を使う人」だと気づいてから、更にハッキリと「嫌な奴だ」と思えるようになりました。

　結局こういう相手とは関わらないのが一番です。
　私は心が狭くて子供なので、もう彼がいる飲み会には行きません。どうしても仕方ないときは、絶対に会話しない位置に座ろうと思います。

　自分の「怒り」の感情にはちゃんと目を向けて、大事にしてあげたいと思いました。